惣辺・奥瀬への巨大人工物の設置は、事業者が想定をしているものも含め、様々な影響が考えられます。このページでは、そんな中で十和田湖・奥入瀬、十和田古道を守るために私たちが危惧をしている影響を取り上げています。
目次
〇景観への影響
-景観への影響が考えられるスポット(別ページ)
〇土地の改変
-リスク1:歴史文化遺産の破壊
-リスク2:奥入瀬渓流への土砂災害
景観への影響
風力を得られる高地に巨大な風力発電機を設置することは、当然周囲からも目測できるようになり、全国に誇る景観を持つこの十和田市やその周辺にとって景観への影響は当然避けなければいけません。 そのため事業者も官公庁から実施許可を得るために主要な調査地点を定め、そこからの晴天時の写真を1枚用意し、そこから影響を予測したフォトモンタージュ(合成写真)が作成することになっています。
土地の改変
リスク1:歴史文化遺産の破壊
惣辺牧場は歴史文化遺産として注目を受け始めている十和田古道が通過し、そこで礼拝を行い、大鳥居が建っていた事実の残る場所です。さらには新発見が続いており、新たな遺跡が隠れいている可能性も十分に残しております。
事業実施のリスクとしては、風力発電所そのものの設置はもちろんですが、例え避けたとしても、資材廃材置き場、巨大機材の移動のための道改変、送電設備等、広範囲に渡って土地改変が必要となるため、周辺での工事そのものがリスクとなります。
土地の形そのものが遺跡であるため、実際に杉の伐採作業でも気付かぬうちに破壊され、二度と戻らなくなったという他地域の城館の事例も存在します。そのため入念な配慮の計画を行わなければ歴史文化遺産の破壊につながるリスクを抱えています。
「十和田古道」の価値とは
現在惣辺エリアで十和田湖への参詣道「十和田古道」の調査が盛んに行われるようになっており、近年多くの新発見が生まれ、県内外の研究者からも注目を受け始めています。
次々と新発見が起こっていることから、古道上と推定されるエリアやその周辺には貴重な歴史文化遺産が隠されている可能性を秘めています。
さらに現在判明している事実として、大鳥居があったこと、そこは遙拝所となっていたことがあります。遙拝所は道中からカミの山を拝む場所のことで、八甲田から十和田の外輪山までの一帯の聖域を拝んでいました。
つまり、この場所の景観そのものでさえも歴史を教える歴史文化遺産なのです。
2020年青森県知事意見と事業者回答
青森県知事意見
事業実施想定区域及びその周辺には、十和田湖への旧参詣道である十和田古道が現存しており、現在の惣辺放牧場広場展望台付近は、かつて遥拝所のあった同古道における重要な地点とされている。
同古道については、未だ十分な知見が得られていないと考えられることから、文献調査や専門家からの意見聴取を行った上で、必要に応じて、「主要な眺望点」や「人と自然との触れ合いの活動の場」に選定すること。
事業者回答
ご指摘の「十和田古道」「惣辺牧場広場展望台」周辺の現地踏査を行ったところ、現時点では、一般の方によって十和田信仰に基づく眺望や自然との触れ合いの活動の場となっている可能性がある箇所は確認できませんでした。
現時点では、古道に関して一般に公開されている情報がごくわずかであり、また公に「史跡」や「文化財」としての指定に至っていないこともあり、『十和田古道』については、保全すべき範囲や歴史的価値に関する公的な見解が固まっていない段階であると考えております。
今後、地元活動団体や地元自治体での研究や調査の進展を引き続き情報収集し、十和田古道の保全範囲や価値に関する公的な見解がまとまった段階で、保全に関して十分に配慮し、事業計画に反映してまいります。
2021年青森県知事意見及び経済産業大臣勧告
「対象事業実施区域及びその周辺には、十和田湖への旧参詣道である十和田古道が現存している。同古道については、未だ十分な知見が得られていないと考えられることから、関係機関等からの意見聴取等を行った上で、必要に応じて主要な眺望点や人と自然との触れ合いの活動の場を選定すること。」
⇒事業者からの公開での回答は2022年現在、確認できず
2021年環境影響評価方法書の住民意見への事業者回答
複数の意見に対しすべて同じ回答で次の通り
「『十和田古道』に関しては、地元の団体が研究や保全について取り組んでいると聞いております。計画の推進にあたりましては、今後も関係団体と意見交換しながら、計画を検討してまいります。惣辺牧場内の「遥拝所跡」の位置については、地元の皆様にご教示いただき、遥拝所跡を改変することのないよう、風車の配置を検討いたします。」
※2022年3月現在、調査関係者との公式な意見交換は行われていない
リスク2:奥入瀬渓流への土砂災害
風力発電所の設置計画場所は基本的に風の受けやすい位置となり、その結果奥入瀬渓流を見下ろす稜線上の設置計画となっています。その場所への巨大風車の建設においては大量の土砂や石を動かす切り土・盛り土工事を必要とします。
それは、2021年夏の熱海土石流災害のような豪雨や、大地震に伴う土石流災害をを招く危険性を孕んでいます。また、それは土石流の規模の問題だけではなく、大量の土砂が奥入瀬渓流に流れ込むリスクを抱えています。
濁水対策への事業者回答(2021年住民意見に対し)
工事計画において、計画地の西側にあたる奥入瀬川上流部並びに惣部川への濁水到達を回避する計画とし、設計ヤード面積に応じた沈砂池の設置により濁水の土壌浸透を促すことや、造成裸地には、ブルーシート等による保護を行う等、具体的な濁水対策を講じます。計画にあたっては、関係法規・指針を基に設計し、可能な限り改変面積を小さくするよう計画を検討いたします。また、今後実施する水環境の予測評価結果を基に、上記の濁水対策を検討いたします。